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スピルバーグ監督のジョーズ、レニー・ハーリン監督のディープブルー以来の本格的サメ映画。
近年はサメ映画のパロディ化がどんどん進み、頭が3つあるサメやら、砂浜を泳ぐサメやら、タコと合体したサメやらでサメ映画はB級どころではない落ちぶれっぷりでした。
サメ映画好きには不毛な数十年間を打ち破ったのが今作、ロストバケーション。
とにかく怖い、めちゃめちゃ恐い、もうサーフィンどころか海水浴すら行きたくなくなる恐ろしさ。しかし、そんな気持ちにさせてこそサメ映画なのです!
休暇で秘境のビーチに来た医学生のナンシー(ブレイク・ライヴリー)は、サーフィンを楽しんでいた最中に脚を負傷する。何とか近くの岩場にたどり着いたものの、ナンシーの存在に気が付いたサメが周囲を旋回していた。
海岸までおよそ200メートルだが、その岩場が満潮で海面下に沈むまであと100分。危機的な状況に追い込まれたナンシーは……。
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ホラー映画の名作「エスター」の監督ジャウマ・コレット=セラ。
彼の持ち味は展開のスピーディーさとスタイリッシュさ、退屈になりがちなドラマ部分を手早くまとめつつしっかりと演出のきいた編集で上映時間はたったの86分。しかし、濃ゆい濃ゆい濃密な86分間です。
サメに襲われた主人公がなんとか逃げ延びた小さな磯。そこからたったの200m泳ぎ切れば浜辺に辿り着けるのですが、サメの泳ぐ速度は時速50キロ、人の泳ぐ速度はせいぜい時速5キロ。
10倍も速く泳ぐサメからはたったの200m先にある安全圏の浜辺まで行くこともできません。もちろんサーフィンをしていただけのブレイク・ライヴリー演じる主人公は武器も持っておらず。
まるでモンスター映画名作のトレマーズのようなこのシチュエーション。目の前にある安全圏に行こうにも行けないじれったさ。
非難した小さな磯も100分後には満潮を迎える海に沈んでしまう。
磯をグルグルと旋回し、その時は待つサメ。じっとしていてもいずれは食べられてしまう恐怖と動こうと決意するほどに視界にちらつくサメ。
「もしかしたら誰かが磯が沈む前に気づいてくれるかも知れない」
そんな淡い期待と恐怖との葛藤はまさに”24″のジャックバウアーもびっくりの臨場感と緊張感。とにかくもうたまりません!
サメ映画と言えばジョーズですが、さすがに何十年も前の作品の為、今見るとどうしてもサメの造りもの感に冷めてしまいます。
今作のサメは現代のCG技術を駆使して作られた本物よりリアルなフォルム、その大きさもジョーズのように大きすぎず、テレビのドキュメンタリーで見たことがあるような4~5mクラスのサメ。
想像できるぎりぎりの範囲で目一杯大きなサイズのサメなんです。
サーフィン中に襲われる恐怖のシーンは、サーファーなら誰もが震え上がる恐ろしすぎる演出で“彼”が現れます。